eGFRが低いとどうなる?放置するリスクと主な原因、腎機能低下を抑える改善策を解説

2025年10月24日

健康診断や人間ドックで「eGFRが低い」と指摘され、不安を感じている方は少なくないでしょう。

とはいえ「腎機能が低下している」と言われても、具体的にどの程度悪く、これからどうすれば良いのか、放置したらどうなるのかわからないものですよね。

この記事では、以下の点を分かりやすく解説します。

  • eGFRの数値が持つ本当の意味と、低い場合に考えられる原因
  • eGFRの数値は改善できるのか、その可能性
  • eGFRが低くても「蛋白尿が陰性」なら大丈夫なのか?
  • 腎機能の低下を食い止めるために今日からできる生活習慣
  • すぐに医療機関を受診すべき基準

この記事を読み終える頃には、ご自身の状態への理解が深まり、過度な不安が軽減され、次に何をすべきかが明確になっているはずです。

eGFRとは?健康診断で「低い」と言われる基準

まず、「eGFR」という数値が何を意味しているのかを正確に理解しましょう。

eGFR(推算糸球体ろ過量)は「腎臓のろ過能力」を示す指標

eGFR(estimated Glomerular Filtration Rate)とは、「推算糸球体ろ過量」の略です。

簡単に言えば、「腎臓が血液をどれくらいキレイにろ過できているか」を示す数値であり、腎臓の働きの“成績表”のようなものです。

腎臓は血液中の老廃物を「糸球体(しきゅうたい)」というフィルターでこし取り、尿として体外に排出する役割を担っています。

eGFRは、このフィルターが1分間にどれくらいの血液をろ過できるかを推算した値です(参考:日本腎臓財団 1)。

なぜクレアチニン(Cr)だけでは不十分なのか?

健康診断では通常、「クレアチニン(Cr)」という項目も測定します。
クレアチニンは筋肉運動の老廃物で、本来は腎臓から排出されます。
腎機能が低下すると排出量が減るため、血液中のクレアチニン値は上昇します。

しかし、クレアチニン値は筋肉量に大きく左右されます。

例えば、筋肉質な人と華奢な人では、同じ腎機能でもクレアチニン値は異なります。

そこで、より正確に腎機能を評価するために、血清クレアチニン値に「年齢」「性別」を加えて計算したのがeGFRです。

これにより、体格差の影響を補正した、より信頼性の高い腎機能の指標が得られます(参考:日本腎臓学会 2)。

eGFRが「低い」とは?CKD(慢性腎臓病)のステージ分類

eGFRの値は、CKD(慢性腎臓病)の重症度分類(ステージ分類)に用いられます(参考:日本腎臓学会CKD診療ガイド 3)。

eGFRが「低い」とは、一般的に60ml/分/1.73㎡未満の状態を指します。

ご自身の数値がどのステージに該当するか確認してみましょう。

  • ステージG1(90以上):正常または高値
  • ステージG2(60~89):正常または軽度低下
  • ステージG3a(45~59):軽度~中等度低下
    健康診断で「eGFRが低い」「腎機能低下」と指摘され始めるのが、主にこの段階です。
  • ステージG3b(30~44):中等度~高度低下
  • ステージG4(15~29):高度低下
  • ステージG5(15未満):末期腎不全
    透析治療の開始が検討される目安となります。

>>慢性腎臓病(CKD)のステージ完全ガイド|数値・症状・生活改善まで解説

eGFRの基準値は年齢・性別で違う?

eGFRは年齢・性別を加味して計算されていますが、それでも「加齢」による影響は受けます。

腎機能は年齢とともに自然に低下していくためです。

eGFR年齢別基準値
年齢 男性 (ml/分/1.73㎡) 女性 (ml/分/1.73㎡)
30代77.0 ~ 117.175.3 ~ 109.8
40代71.4 ~ 108.969.8 ~ 102.3
50代65.8 ~ 100.364.3 ~ 94.8
60代60.1 ~ 91.858.8 ~ 87.3
70代54.5 ~ 83.253.3 ~ 79.7
80代48.9 ~ 74.647.8 ~ 72.1

(注:上記はあくまで目安であり、検査機関により基準範囲は異なる場合があります)

表を見ると、70代や80代ではeGFRが60未満であっても、必ずしも異常とは言えません。

重要なのは、「年齢相応の低下」なのか、それとも「病気によって“年齢以上に”早く低下している」のかを見極めることです。

例えば、40代でeGFRが50台であれば、それは加齢による自然低下とは考えにくく、何らかの原因による「病的な低下」が疑われます。

eGFRが低い主な原因は?なぜ腎機能が低下するのか

eGFRが低下する(=腎機能が悪化する)背景には、様々な原因が隠れています。

最大の原因:生活習慣病(糖尿病・高血圧)

現代の日本人において、eGFR低下(CKD)の最大の原因は、糖尿病と高血圧です。

これらは腎臓に深刻なダメージを与えます。

なぜ高血圧が腎臓を傷つけるのか?(腎硬化症)

腎臓は、細い血管(糸球体)の塊です。

長期間にわたり高い圧力がかかり続けると、この細い血管が硬く、もろくなってしまいます(動脈硬化)。

その結果、フィルター機能が壊れ、腎機能が低下します。

なぜ糖尿病が腎臓を傷つけるのか?(糖尿病性腎症)

高血糖の状態が続くと、腎臓のフィルター(糸球体)が目詰まりを起こしたり、傷ついたりします。

初期段階では蛋白尿が出始め、進行するとeGFRが低下し、最終的に腎不全に至ります。

腎臓自体の病気

生活習慣病以外に、腎臓そのものに炎症などが起きる病気も原因となります。

慢性腎炎(IgA腎症など)、多発性嚢胞腎など

IgA腎症は、免疫の異常により糸球体に炎症が起きる病気で、検診での血尿や蛋白尿をきっかけに見つかることが多いです。

多発性嚢胞腎は、遺伝的に腎臓に多くの「嚢胞(のうほう)」という水の袋ができ、それが徐々に大きくなることで正常な腎組織を圧迫し、腎機能を低下させる病気です。

見落としがちな原因:薬剤性と一時的な低下

病気だけでなく、薬や体調によって一時的にeGFRが低下することもあります。

薬剤性腎障害(鎮痛薬(NSAIDs)、抗生物質など)

市販の痛み止め(解熱鎮痛薬、NSAIDsと呼ばれるタイプ)の長期常用や、一部の抗生物質、造影剤などが腎臓に負担をかけ、eGFRを低下させることがあります。

一時的な低下(脱水、過度な運動、筋肉量の影響)

検査当日にひどい脱水状態だったり、検査直前に非常に激しい運動をしたりすると、一時的にクレアチニン値が上がり、eGFRが低く出ることがあります。

また、ボディビルダーのように極端に筋肉量が多い場合も、計算上eGFRが低く出ることがあります。

自覚症状はほぼない?「沈黙の臓器」と呼ばれる理由

eGFRが低いと指摘されても、「特に症状はないのに」と感じる方がほとんどです。

腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、eGFRがかなり低下する(ステージG4やG5)まで、むくみ、だるさ、貧血、吐き気といった自覚症状はほとんど現れません。

症状がないからといって安心せず、「症状が出る前に数値で異常を見つける」ことが、eGFRを測定する最大の目的なのです。

eGFRは改善できる?数値を「上げる」ためにできること

「一度下がった腎機能はもう戻らないのか」と悲観的になるかもしれませんが、早期であれば対策は可能です。

結論:eGFRの数値は「改善・維持」できる可能性

残念ながら、硬くなってしまった腎臓の組織(線維化)を元に戻し、eGFRを劇的に「上げる」ことは難しいのが現実です。

しかし、早期の段階(特にG3aなど)であれば、適切な対策を講じることで、eGFRがそれ以上下がる速度を緩やかにし、「維持」することは十分可能です。

原因(脱水・薬剤性など)の除去で数値が回復するケース

もしeGFR低下の原因が、前述した「薬剤性」や「一時的な脱水」であった場合、原因となっている薬剤を中止したり、脱水を補正したりすることで、eGFRの数値が改善・回復するケースもあります。

生活習慣の改善①:食事療法(減塩が最優先)

腎機能を維持するために、生活習慣の改善は不可欠です。

その中でも最も重要なのが「減塩」です(参考:日本腎臓学会CKD診療ガイド 4)。

なぜ「減塩」が腎保護に最も重要なのか?(1日6g未満目安)

塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、体は水分を溜め込もうとし、血液量が増加します。

その結果、血圧が上がり、腎臓のフィルター(糸球体)に強い圧力がかかり続けます。

これが腎機能を悪化させる最大の要因の一つです。

腎機能の低下を指摘されたら、まず「1日6g未満」を目標に減塩を徹底しましょう。

これは、血圧を下げるだけでなく、腎臓の負担を直接減らす(腎保護)効果があります。

タンパク質制限はステージによる

「腎臓が悪い=タンパク質制限」というイメージがあるかもしれませんが、自己判断で行うのは危険です。

タンパク質制限は、eGFRがかなり低下したステージG4以降で検討されることが多く、早期のG3aなどでは厳格な制限は必要ない場合もあります。

かえって栄養不足(サルコペニア)を招くリスクもあるため、必ず医師や管理栄養士の指導に従ってください。

カリウム制限が必要な場合とは?

カリウムは通常、腎臓から排出されますが、腎機能が高度に低下すると(主にG4以降)、排出できずに血液中に溜まり、不整脈などの原因となります。

この段階になって初めて制限が必要になります。

eGFRが軽度低下の段階で、生野菜や果物を過度に避ける必要はありません。

生活習慣の改善②:適度な運動と禁煙

推奨される運動(ウォーキングなど)

ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、血圧や血糖値を改善し、腎機能の維持にも良い影響を与えます。

禁煙が腎機能維持に不可欠な理由

喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を強力に推進します。

これは腎臓の血管も例外ではありません。

腎機能の低下速度を早める明確なリスク因子であるため、eGFRの低下を指摘されたら、ただちに禁煙することが強く推奨されます。

生活習慣の改善③:市販薬やサプリとの付き合い方

鎮痛薬の常用に注意

頭痛や関節痛などで、市販の解熱鎮痛薬(NSAIDs)を日常的に(ほぼ毎日)飲んでいる方は注意が必要です。

腎臓の血流を低下させ、腎機能を悪化させるリスクがあります。
常用している場合は、必ず医師に相談してください。

「腎臓に良い」とされるサプリメントの注意点

科学的根拠(エビデンス)が不明確なサプリメントや健康食品には注意が必要です。

特定の成分が腎臓に負担をかけたり、カリウムが多く含まれていたりする場合があります。

良かれと思って摂取したものが、逆効果になる可能性もあるため、摂取前に必ず主治医や薬剤師に相談してください。

eGFRが低くても「蛋白尿が陰性」なら大丈夫?

健康診断の結果を見て、「eGFRは低い(60未満)けれど、蛋白尿は(-)だった」という方も多いでしょう。

これは、腎臓の状態を評価する上で非常に重要な情報です。

「蛋白尿が陰性(-)」は非常に良いサイン

結論から言うと、eGFRが低くても蛋白尿が陰性(-)であることは、非常に良いサインです。

CKD(慢性腎臓病)のリスクは、eGFRの数値(ステージG分類)と、蛋白尿の量(A分類)を組み合わせて評価されます。

eGFR区分 (mL/分/1.73㎡) 尿たんぱく区分
A1: 正常 A2: 軽度 A3: 高度
G1: 90以上
G2: 60〜89
G3a: 45〜59
G3b: 30〜44
G4: 15〜29
G5: 15未満
蛋白尿が陰性なら、eGFRが多少低くても(G3aなど)、進行リスクは低い

この図が示すように、同じeGFRのステージでも、蛋白尿が出ている(A2, A3)と、末期腎不全や心血管疾患への進行リスクは急激に高まります。

逆に、eGFRがG3a(45~59)であっても、蛋白尿が陰性(A1)であれば、リスクは「中リスク」にとどまります。

これは、腎臓のフィルターの“破れ”がまだ起きていないことを意味し、将来的に透析に至る可能性は比較的低い状態と言えます。

ただし「大丈夫(放置してよい)」とは言い切れない理由

eGFRが低い=腎機能が低下している事実は変わらない

「蛋白尿が陰性だから安心だ」と、放置してよいわけでは決してありません。

eGFRが60未満である時点で、腎臓の“ろ過能力”が年齢相応以上に低下しているという事実に変わりはないからです。

油断して生活習慣が乱れれば、蛋白尿が出現・悪化するリスク

今は蛋白尿が出ていなくても、原因となっている高血圧や糖尿病、あるいは生活習慣の乱れ(特に塩分の過剰摂取)を放置すれば、いずれ腎臓のフィルターはダメージを受け、蛋白尿が出現する可能性があります。

蛋白尿が出始めた時点から、腎機能の低下は一気に加速します。

結論:定期的な検査(eGFRと尿検査)の継続が不可欠

eGFRが軽度低下(G3a)で蛋白尿が陰性の方は、「過度に悲観する必要はないが、油断も禁物」という状態です。

「今ならまだ間に合う」という重要なサインと捉え、生活習慣の改善に取り組みながら、最低でも半年に一度、できれば3~4ヶ月に一度は医療機関でeGFRと尿検査(蛋白尿)を定期的にチェックし続けることが不可欠です。

eGFRが低いまま放置するリスク

「症状もないし、まだ大丈夫だろう」とeGFRの低下を放置すると、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。

腎機能低下の進行 → 末期腎不全へ

eGFRの低下は、多くの場合ゆっくりと進行します。

しかし、適切な対策(原因疾患の治療や生活習慣の改善)を行わなければ、その低下は止まらず、G3a → G3b → G4へと進んでいきます。

「透析」が必要になる基準

そしてeGFRが15未満(ステージG5)になると、腎臓は老廃物や余分な水分を体外に排出する能力をほぼ失います(末期腎不全)。

この状態になると、尿毒症(吐き気、食欲不振、意識障害など)や心不全を防ぐために、腎臓の代わりとなる「透析治療」が必要になります。

透析治療の現実(時間的・身体的負担)

血液透析の場合、一般的に週3回、1回4~5時間かけて医療機関で血液を浄化する必要があります。

これは生活に大きな制約をもたらします。

多くの患者さんが「透析だけは避けたかった」と感じています。

早期の対策は、この未来を回避するために行うのです。

心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中)のリスクが急上昇

eGFRが低いことのリスクは、透析だけではありません。

腎機能が悪いと、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患(心臓や脳の血管の病気)のリスクが急激に高まることがわかっています。

腎臓が悪いと心臓も悪くなる

腎臓と心臓は密接に関連しており(腎心連関)、腎機能が低下すると動脈硬化が進みやすくなり、心臓にも負担がかかります。

実際、CKD患者さんは、透析に至る前に心血管疾患で亡くなるケースも多いのです。

「eGFR低値」を指摘されたら、まず何をすべきか

健康診断でeGFR低値を指摘されたら、不安な気持ちを抱えたままにせず、具体的な行動に移すことが重要です。

まずは「かかりつけ医」または「腎臓専門医」へ相談を

「eGFRが低い」と指摘されたら、まずはかかりつけ医(高血圧や糖尿病で通院中の方)に相談してください。

かかりつけ医がいない場合は、内科または腎臓専門医を受診しましょう。
その際、必ず健康診断の結果用紙を持参してください。

可能であれば、過去数年分の結果も持参すると、eGFRが「いつから」「どれくらいの速度で」低下しているのかが分かり、非常に重要な診断材料となります。

受診を急ぐべきサイン

特に以下に該当する場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • eGFR 45未満(G3b以下)を指摘された
  • 蛋白尿が(+)以上出ている
  • むくみ、だるさ、貧血などの自覚症状がある
  • 前回の検査より急激に数値が悪化している(例:1年でeGFRが10以上低下した)

病院で行う精密検査と専門的な治療法

医療機関を受診すると、eGFR低下の原因を特定し、進行を抑えるための検査や治療が始まります。

診断に必要な精密検査

eGFR低下の原因を正確に突き止めるため、以下のような検査を行います。

再度の血液検査、尿検査(蛋白尿・血尿の定量)

健康診断の数値が一時的なものでないかを確認します。

尿検査では、蛋白尿や血尿の「量」を正確に測定し、腎臓のダメージの程度を評価します。

腹部エコー(腎臓の形態、結石、嚢胞の確認)

超音波検査で、腎臓の大きさ(慢性的に悪いと腎臓は萎縮します)や形、結石や嚢胞(多発性嚢胞腎など)の有無を視覚的に確認します。

腎機能低下を抑えるための薬物療法

検査で原因が特定されれば、生活習慣の改善と並行して、腎機能の低下を抑えるための薬物療法が行われます(参考:米国腎臓財団 5)。

原因疾患(高血圧・糖尿病)の治療が基本

eGFR低下の最大の原因である高血圧や糖尿病の管理を徹底することが、腎保護の基本です。

RAS系阻害薬(降圧剤)

「ACE阻害薬」や「ARB」と呼ばれるタイプの降圧剤です。

これらは血圧を下げるだけでなく、腎臓のフィルター(糸球体)の内圧を下げることで、蛋白尿を減らし、腎臓を保護する作用(腎保護作用)があります。

SGLT2阻害薬(糖尿病治療薬・腎保護薬)

もともとは糖尿病の薬ですが、近年、血糖値を下げる効果とは別に、強力な腎保護作用と心保護作用があることが分かりました。

現在では、糖尿病の有無にかかわらず、CKD(特に蛋白尿陽性の場合)の進行を抑えるための標準的な治療薬として広く使われています。

新たな治療法を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

日本では低いeGFRでお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。

例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。

実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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eGFR・腎機能に関するよくある質問

最後に、eGFRに関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q. eGFRを上げる(改善する)食べ物はありますか?

A. 特定の食べ物を食べればeGFRが「上がる」という魔法のような食品はありません。

腎機能の維持・改善のために最も重要なのは、バランスの良い食事と、何よりも「減塩」(1日6g未満)です。

カリウムやタンパク質の制限については、ご自身のCKDのステージによって必要性が異なりますので、自己判断せず、必ず医師や管理栄養士にご相談ください。

Q. eGFRが低い原因が「女性」特有のものはありますか?

A. 一般的に女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、クレアチニン値が低めに出る傾向があります。

そのため、eGFRはむしろ高め(腎機能が良く)に出ることがあります。

逆に、女性でeGFRが「低い」と出た場合は、その数値はより深刻に受け止める必要があります。

原因としては、妊娠高血圧の既往や、膠原病(SLEなど)といった女性に比較的多い自己免疫疾患が隠れている可能性も考慮します。

Q. eGFRが59以下(G3a)だとどうなりますか?

A. 腎機能が健康な人の60%未満に低下している状態(CKDステージG3a)です。

すぐに透析が必要になるような深刻な数値ではありません。

しかし、腎機能が低下し始めているという重要なサインであり、放置すればG3b、G4へと進行する可能性があります。

専門医による評価と、減塩を中心とした生活習慣の見直しをただちに始めるべき段階です。

Q. eGFRが30未満(G4)だとどうなりますか?

A. 腎機能が健康な人の30%未満にまで高度に低下している状態(CKDステージG4)です。

末期腎不全(G5)が近い状態で、透析の準備についても視野に入れ始める必要があります。

腎臓専門医による厳格な管理(食事制限・薬物療法)が必須です。

この段階になると、むくみ、貧血、だるさといった自覚症状が出始めることもあります。

まとめ

eGFRが低いという結果は、腎臓があなたに送った「生活を見直してほしい」という重要な警告(サイン)です。

しかし、「蛋白尿が陰性」で「eGFRが軽度低下(60未満~45程度)」の段階であれば、過度に悲観する必要はありません。

この記事で解説した「減塩」や「運動」「禁煙」といった生活習慣の見直しを実践し、必要に応じて適切な薬物治療を受けることで、腎機能の低下速度を緩め、維持・改善できる可能性は十分にあります。

最も重要なのは、ご自身の正確な状態を知り、早期に対策を講じることです。

健康診断の結果を放置せず、必ず一度は医療機関を受診してください。

参考資料・文献一覧
1.日本腎臓財団 http://www.jinzouzaidan.or.jp/
2.日本腎臓学会 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042647.pdf
3.日本腎臓学会CKD診療ガイド https://jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD_evidence2013/gainenn.pdf
4.日本腎臓学会CKD診療ガイド https://jsn.or.jp/guideline/pdf/CKD_evidence2013/gainenn.pdf
5.米国腎臓財団 https://www.kidney.org/kidney-topics/ace-inhibitors-and-arbs

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